日本人と結婚して一緒に暮らしているけれど、まだ役所に婚姻届を出していない――いわゆる事実婚の状態。このような関係にある外国人は、日本で暮らすためのビザ(在留資格)を取得できるのでしょうか?
結論から言うと、事実婚の状態で「日本人の配偶者等」ビザ(いわゆる配偶者ビザ)を取得することは原則としてできません。ただし、一定の事情がある場合には、「定住者」ビザの取得が認められる可能性があります。
「日本人の配偶者等」という在留資格は、日本の民法に基づいて法律上の婚姻関係が有効に成立している夫婦を対象としています。つまり、日本の役所に婚姻届を提出し、その届出が受理されて戸籍上で夫婦関係が確認できることが前提です。
そのため、たとえ同居し、実質的に夫婦と同様の生活を送っていたとしても、戸籍上の婚姻が確認できない事実婚関係では「配偶者ビザ」は認められません。
外国人側の国で婚姻が有効に成立していたとしても、その事実を日本で婚姻届として提出し、日本人側の戸籍に反映させなければ、日本の入管法上の「配偶者」とはみなされません。
戸籍上の婚姻がないまま日本で生活を共にしたい場合、「定住者」ビザを申請できる可能性があります。
「定住者」とは、法務大臣が個別の事情を考慮して日本での在留を認める在留資格で、人道的な配慮などを理由に特例的に許可されるものです。
事実婚のカップルの間に日本国籍の子どもがいる場合、外国人パートナーは「日本人の実子の親」として定住者ビザを取得できる可能性が高くなります。その際には、以下のような証拠資料の提出が求められます。
・子どもの出生証明書や戸籍謄本
・日本人側が子を認知していることを証する書面
・子どもと外国人パートナーが実際に同居・養育していることを示す資料
日本人の配偶者と長期間(目安として3年以上)同居し、生計を一にしている場合、たとえ日本人の実子がいなくても、人道的配慮から定住者ビザが許可されることがあります。ただし、これはあくまで入管の裁量による判断であり、立証が非常に難しいケースです。
事実婚に基づく定住者ビザ申請では、「配偶者ビザ」よりもさらに厳しい審査が行われます。入管は、関係の真実性と経済的な安定性を中心に審査します。
単なる同居や恋人関係ではなく、「婚姻に準じた関係」であることを示す資料が必要です。
・同居証明
・交際・生活の記録
・理由書
日本人パートナーが外国人パートナーを養えるだけの経済力を持っているかも厳しく審査されます。
・課税証明書や納税証明書
・源泉徴収票、給与明細
・預貯金残高証明など
事実婚でのビザ申請は、入管の裁量判断が大きく、不許可となる可能性が高い難易度の高い申請です。一度不許可になると、再申請がより厳しくなることもあります。
最も確実でシンプルな方法は、やはり日本の役所に婚姻届を提出して「日本人の配偶者等」ビザを申請することです。どうしても入籍できない特別な事情がある場合は、入管実務に詳しい行政書士などの専門家に相談し、立証方針を慎重に検討することを強くおすすめします。
本記事は、執筆時点の法令および入管運用(2025年10月時点)に基づいて一般的な情報をまとめたものです。実際の申請可否は、個々の事情や証拠資料、入国管理局の判断によって大きく異なります。具体的なケースについては、必ず専門家(行政書士・弁護士など)にご相談ください。
電話: 8:00~19:00
メール:24時間対応
LINE: 24時間受付